サービスサイエンス 価値創出と価値共創について

サービスデスクの中村(哲)です。

前回の「サービスサイエンスを通して顧客満足を分析する方法について」に引き続き、サービスサイエンス観点での価値創出価値共創についてのお話となります。
※この回は、サービスドミナントロジック(S-D Logic)を参考にさせて頂き書いておりますが、私が独自に勉強したり考えたりした解釈も多々入れておりますので温かい目でご覧頂ければ幸いです。

価値創出価値共創というと一般的には、ソーシャルメディアを使ってユーザから新しいアイデアを取り入れたり、異業種とコラボレーションを行い新しい観点の製品やサービスを作るイメージを持っている方も多いかと思いますが、今回はこのようなマーケティング的な考えではなくサービスサイエンス的な考え方という観点になります。

価値創出

価値については、以前「ITIL視点によるAWS利用の注意点について」でもお話させて頂きました通りITILでは有用性と保証の両方を兼ね備えているものが価値があるものとして定義しております。
では、この価値が生まれるのはどのタイミングなのでしょうか?

製品やサービスの提供者は、その製品やサービスに価値が付随するものと考えがちですが、製品やサービスは目的に合わせて使用した際に初めて価値がでるということが一般的に言われており、これを「使用価値」といいます。他には交換価値のような、交換することによる価値もありますが、深く知りたい方はマルクスなんかの資本論を読まれると良いかと思います。

価値創出は、今まで使用価値が高ければユーザは満足するというものでしたが、結果以外の箇所にもユーザが選択タイミングが含まれているという考えベースにしております。

例えば、車を購入する際には、

車購入

と考えられますが、使用価値で考えると価値は「運転」をして始めて価値が認識されるということになります。
しかし、実際はディーラやサイトで車を選んでいる段階でも、ディーラの販売員が感じ悪くないか?希望に沿った提案か?サイトが見やすく選びやすいか?などの判断を無意識に行っており、いかなるタイミングにおいても良いか悪いかの判断が行われてます。言い換えれば、運転という結果を受けるまでに様々なタイミングで価値が高いか低いかを判断していることになります。これは、前回お話した、「サービスサイエンスを通して顧客満足を分析する方法について」のプロセス品質にあたります。

ITでは今まで機器販売だけを行っていたところに保守サービスが発生し、ユーザは保守についての手間や知識が不要になりました。そして、クラウドではハードウェアの保守や手配なども不要になっております。

クラウドへの移行

つまり、使用する価値だけではなく、使用にいたるまでのプロセスが価値として置き換わる考えが価値創出になります。

価値創出から価値共創へ

使用価値では、物やサービスによって目的が達成されることを着眼しておりますが、価値創出は「その結果だけではなく結果を受けとるまでのプロセスにも価値がある」ということを主眼においております。つまり、前回の内容である成果品質とプロセス品質が合わさったものが価値があるということになります。
ただし、この価値創出には以下の課題に対応しなくてはいけません。

価値創出 = 無駄の排除ではない
・受け取る側により得られる結果が異なる

クラウドの例を出すことにより誤解を与えてしまいますが、価値創出は無駄なプロセスを取り除くのではなく、結果までのプロセスを価値のあるものに変えることに主眼をおきます。
ディズニーランドでは、清掃員をカーストディアルと呼びエンターテイメントの一つにしております。以前聞いた話では、ディズニーランドのリピート理由は、「清潔なパーク、親切なスタッフ」が3位のアトラクションを抜いて2位になっているようです。
ちなみに1位は、パレードだそうです。

また、価値創出では新しい価値提供いたしますが、判断するのは受け手側であるためユーザの経験や知識、好みにより評価が大きく異なります。
好みによる評価の違いは納得頂けると思いますが、ユーザの経験や知識などのリテラシーによって受けるサービスの品質が異なる事はあまり受け入れられない考えです。

従来の対応では、企業努力として「分かりやすい資料」「分かりやすい仕様」「誰でも使えるようにする」のが当然であり、ユーザにリテラシーを求めてはいけないし、ユーザを選ぶや教育するという表現を行うとさらに反発が大きくなります。
※ただし、マズローの5段階の欲求の低次欲求は満たす必要はあります。

そこで、価値共創の考えが必要になってきます。
価値共創は、上記のような表現の言い回しを変えてごまかすという手法ではなく、ユーザにサービスを理解してもらう仕組みを作るという考え方になります。
その中で重要なワードとして、「体験と場」「失敗」「つなげる」ということが重要です。

新しいソフトウェアを導入するとき、こんなことを聞いたことはないでしょうか?
「検証用をもらえますか?」と。

新しいものは試さないと分からないし、検証用なら失敗をしても問題ない。これは、価値共創の考えをものすごくシンプルに表したものになります。

リテラシーによる品質の違いは、ネガティブとして捉えられており、平等に品質を受けるのが当然と思われてますが、私たちが普通に接しているサービスでも高いリテラシーを求められながらも多くの人に支持されているものは数多く存在しております。その代表例がラーメン二郎です。

ラーメン二郎に行ったとき、同じラーメンでも「マシマシ」を言うか言わないかで出てくるラーメンの品質(量)が大きく変わってきます。
ここでは、ユーザが「マシマシ」の存在を知っており、かつ「マシマシ」を伝えるタイミングと「マシマシで」と言う勇気が必要になります。
(僕は、最初何が「マシマシ」になるのか?追加料金が発生するんじゃないか?など思って頼めませんでした・・・)
また、「マシマシのマシマシ」と少し知ったかぶって言うと、凄く冷たい目で「そんなもんねぇよ」と言われたりします。

つまり、ユーザ側のレベルによって受けるサービス品質が異なります。
それでも、ラーメン二郎には熱狂的なリピーターが多くいるのはどういう理由なのだろうと考えるのが価値共創の考え方になります。

二郎に何度も通う理由は、人にもよりますが一例として

・誰かがFaceBookやブログで二郎投稿をみて飯テロを受ける
・店舗毎の違いを楽しむ
・マシマシと言える様になりたい。同じお金で最大限得をしたい
・油とにんにくが呼んでいる

などがありますが、これを「体験と場」、「失敗」、「つながり」に置き換えると、以下のような分類ができると思います。

TST

 

まとめ

クラウドからビッグデータ、IoTなど新しいサービスや複雑なものは、次々と出てきてます。その複雑性をサービス提供者が改善や努力によってシンプルで分かりやすいものにしていくことは確かに大事ですが、その事によってスピード感が失われるのもまた勿体無いことです。
価値共創は、妥協の考えではなくサービスの価値を最大限に高める手法であり、今回はその中でも基本となるベースのお話をさせて頂きました。

「ファンを作る」や、「お客様と一緒に成長する企業」などのフレーズを聞きますが、じゃあどうやるの?と、考えた時には、サービスサイエンスの考えが役に立つのではないかなと思います。

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